とくしま空き家スタイル

TOP空き家の利活用事例 > インタビュー②【古民家で暮らす】

ちょっと見方を変えれば、
とても裕福に暮らせる場所です。

大阪で生まれ育った福田さんは、大学を卒業後、母の故郷でもある徳島で建築士としての第一歩を踏み出しました。今では空き家判定士の資格を持つ建築士の一人として、県内の新築やリフォームを数多く手掛けています。
祖父母の家を改修し、徳島での豊かな暮らしを実践する福田さんに、古民家再生のメリットや可能性を伺いました。

徳島の
多様な木造建築に
ふれながら

─徳島に移住したきっかけを教えてください。

福田:大学卒業後は東京や大阪での就職を考えていたのですが、建築士として独立するためには、どこかの建築事務所で10年ぐらい修行する必要がある。それなら、あえて田舎を選んでみるのも面白いかもしれないと思ったんです。鳴門は母が生まれ育った場所なので馴染みもありました。大学3回生の時に祖父が亡くなり、祖母が鳴門の古民家に一人で残されたタイミングだったことも、徳島での就職を後押ししました。

─徳島で建築を学ぶ中で身に付けたことはありますか?

福田:以前にお世話になった会社では、主に大きな商業ビルの設計をしていました。独立後、もう一度木造建築を学び直そうと思って「阿波のまちなみ研究会」に入らせていただいたんです。そこで、徳島の民家についていろいろと学ぶうちに「徳島には、こんなに多様な木造建築があるんだ」ということに改めて気付かされました。

─具体的には、どのような木造建築があるのでしょう?

福田:村集落や山村、街中など、場所によって木造建築のカタチもさまざまですね。たとえば、いま僕が住み継いでいる祖父母の家もそうですが、真ん中に母屋があって、その両サイドに納屋があり、北西に蔵があるような造りは、徳島の農家の典型的な形と言えます。また、鳴門は板東俘虜収容所があった地域でもあるので、ドイツの技法を用いた建築物も多く残されていたり。水平・垂直で屋根が形成される和小屋と違い、ドイツの建築技術を用いた洋小屋の屋根には、斜め材が使われていたりするんです。また、撫養街道沿いには中庭が設けられた町屋などもある。それぞれの特徴をしっかりと活かした家づくりを行うことで、住まいの魅力も飛躍的に高まると思います。

古民家だからこそ
味わえる
田舎暮らしの魅力

─ご自宅も、とても良い雰囲気に改修されていますね。

福田:祖父母が残してくれた築110年の古民家を、少しずつ改修しながらここまで作り込んできました。リフォームを希望されるお施主様の中には「自分も、こんな感じの家にしたい」と共感してくださる方もいらっしゃいます。でも、気付いた所を少しずつリフォームしているので、実はまだ未完成なんですよ。トイレに建具が付いていないので、妻や友人から「早く付けて!」と怒られてます(笑)。

─冬の古民家は寒いイメージですが、この家はとても暖かくて驚きました。

福田:この家を改修するにあたり、最初に掲げた目標が“寒さからの脱却”だったんです。昔は土間で料理をしていたのですが、本当に寒くて冬場はスノーブーツを履いていたほどでした。床下に暖かい空気を循環させる装置を設置し、屋根にはトップライトを設けて太陽光を家の中に取り入れました。そこに薪ストーブによる暖房を加えることで、冬でもシャツ1枚で過ごせるほど暖かくなりました。燃料の薪は近所の方からいただけるので、光熱費はほとんど掛かりません。これも田舎暮らしの魅力の一つだと思います。

─リビングやキッチン周りはデザイン性も豊かですね。

福田:ありがとうございます。この家は、部屋を4つの空間に仕切る「田の字型」をしていたので、天井板やふすまを取るだけで、開放的な空間を実現することができました。天井をつたう立派な梁には、きれない12の面があるでしょう?こういった細かい作業ができるのも、昔の職人だからこそです。今は人件費も高くなったので、ここまで作り込もうとすると費用もかさんでしまう。そういう価値が、古民家にはたくさん潜んでいます。

─キッチンやリビングとフラットにつながるウッドデッキは増築されたのですか?

福田:当初から計画していたのですが、2年ほど前にようやく完成させました。母屋と蔵、離れ座敷をつなぐ渡り廊下のようになっていて、天気の日には外で食事をすることもできます。また、ウッドデッキのすぐ横にお風呂を設け、露天風呂のような楽しみ方もできるようにしました。お風呂に入りながら青空を見たり、星空をみたり。このお風呂を気に入っていただき、同じものを要望されたお施主様も何人かいらっしゃいます。ちょっと工夫をするだけで、毎日の暮らしは驚くほど豊かになるんです。

リノベーションは
耐震補強のチャンス

─徳島での移住を検討されている方に、何かアドバイスはありますか?

福田:ちょっと郊外に行けば土地が安くなるので、他県よりも広めの敷地を手に入れられる可能性が高いと思います。広い庭を活かして、自分のやりたいことが実現できるのも田舎暮らしの魅力と言えるのではないでしょうか。わが家では、庭で薪を割るのが日課になりました。うちのスタッフにも手伝ってもらっていますが、最初に比べて見違えるように上手くなりましたね(笑)。

─地方だからこそ、手に入れられる暮らしがあるんですね。

福田:本当にそう思います。徳島には海も、山も、川もある。海の目前に家を建て、裏口からすぐに釣りに行けるような環境を手に入れたお施主様もいらっしゃいました。都会のような便利さはないかもしれませんが、少し見方を変えれば、とても裕福に暮らせる場所だと思います。

─空き家判定士としても活躍されている福田さんから、最後にメッセージをお願いします。

福田:わが家は築110年の古民家ですが、県が推進する耐震補強も行っているので、子どもたちと安心して暮らすことができています。特に大掛かりなリノベーションの際は、耐震補強を効率よく行うまたとないチャンス。古い家だからと耐震性を諦めず、県が行っている耐震診断や、空き家改修時の補助金などを上手く活用ながら、自分だけの豊かな暮らしを手に入れてください。

Before

After


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